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ロシア情報戦に「Qアノン・反ワクチン」が接近…人が自らフェイクを求める理由とは?社会への不信の行き先

2022-03-25 鉄道模型 6717 ℃ 0

ロシア情報戦に「Qアノン・反ワクチン」が接近…人が自らフェイクを求める理由とは?社会への不信の行き先

    ロシア情報戦に「Qアノン・反ワクチン」が接近…人が自らフェイクを求める理由とは?社会への不信の行き先ウクライナ侵攻をめぐる情報戦が激しさを増しています。ロシアの国連大使は、米国がウクライナで生物兵器開発をしていると主張。西側諸国は、国連の会合を利用して陰謀論を拡散しているなどと非難しました。現在、起

ロシア情報戦に「Qアノン・反ワクチン」が接近…人が自らフェイクを求める理由とは?社会への不信の行き先

    

ロシアのプーチン大統領=ロイター

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ウクライナ侵攻をめぐる情報戦が激しさを増しています。

    ロシアの国連大使は、米国がウクライナで生物兵器開発をしていると主張。

    西側諸国は、国連の会合を利用して陰謀論を拡散しているなどと非難しました。

    現在、起きているのは、ロシアによる明らかなフェイクと、既存の陰謀論や反ワクチンの運動との〝連帯〟です。

    暴走する社会への不信感はどこに向かうのか? 評論家で著述家の真鍋厚さんが解き明かします。

    

ロシア国営テレビで「NO WAR」掲げた女性の〝その後〟裁判所の前に詰めかけた報道陣に……

「デマの半信半疑化」が起きている現在、ロシアが画策している情報操作の多くは、旧ソ連時代にまでさかのぼることができるお家芸であり、まず相手を攻撃する理由を捏造(ねつぞう)して信用失墜を狙う「偽旗作戦」の典型例といえます。

    

これまでもロシアは、カザフスタンやジョージア(グルジア)などでアメリカの資金提供により致死性のウイルスを製造しているという発表を行い、ロシアのメディアなどが追随していました。

    まったく同じ手法をウクライナにも用いているのです。

    

しかしながら、どんなに荒唐無稽でも「政府→国営メディア→親ロシアメディア→SNSの親ロシアアカウント」というふうに情報が拡散されると、勝手連的な陰謀論者やインフルエンサーなどの間で情報は増幅されます。

    その結果、一定の信憑性が醸成される「デマの半信半疑化」が生じやすくなります。

    

事実、多くの著名人がロシアのプロパガンダに引きずられ、デマの片棒を担ぐ結果になっています。

    嘘に嘘を積み重ねる「嘘のミルフィーユ」戦略は、すべてが虚偽と断定するにはあまりにも膨大な量であるがゆえに、完全にデタラメな話には思いづらくなる効果が期待できるのです。

    

Qアノン・反ワクチン運動との接近反米イデオロギーに染まっていたり、反グローバリズムに凝り固まっていたりする人々であればなおさらこのような罠に掛かりやすくなります。

    

Qアノン(影の政府が世界を支配するというアメリカ発の極右陰謀論)や反ワクチン界隈への影響は甚大で、彼らにとってプーチン大統領は、ディープステート(影の政府)に立ち向かう英雄であり、今回の特別軍事作戦は、大量殺戮を招く生物兵器を破壊し、拘束された子どもたちを救うための戦いに見えているのです。

    

英ガーディアン紙は、反ワクチンや福音主義者、極右などコロナに懐疑的なグループにおいて、ウクライナ侵攻をディープステートへの攻撃と称賛する陰謀論であふれかえっている実態をリポートしています(Australian online anti-vaccine groups switch to Putin praise and Ukraine conspiracies/2022年3月2日/The Guardian)。

    

彼らは今までもコロナがアメリカの開発した生物兵器であるとの説を鵜呑みにし、西側諸国のコロナワクチンが毒物だとする偽情報に浸ってきました。

    

例えば、アメリカのソーシャルメディア分析会社(ZignalLabs社)によれば、ウクライナ侵攻がコロナワクチンの被害から目を逸らさせるためにアメリカ政府が作り出したという陰謀論が意図的にまき散らされていたと報告しています(Putin targets anti-vax groups, others with disinformation/2022年2月25日/Los Angeles Times)。

    

ネット上では、ウクライナ侵攻自体が大勢の役者やCGによって創作されているという珍説を信じる者がおり、コロナ禍初期にパンデミックが周到に演出されたものと吹聴する陰謀論と非常によく似ています。

    陽動目的で架空の事件をでっち上げるというわけです。

    

コロナ生物兵器の起源はソ連時代にそもそも、コロナがアメリカの生物兵器だとする陰謀論の起源は、ソ連時代に仕掛けられた情報工作にまでたどれます。

    

国際政治学者のP・W・シンガーと米外交問題評議会客員研究員のエマーソン・T・ブルッキングは、「とりわけ悪名が高いのはアメリカ軍がエイズを発明したと主張するインフェクツィオン(ドイツ語で感染の意)作戦」だと述べ、1983年にKGBがインドのパトリオット紙に論文を掲載したのが作戦の始まりとしています。

    

同紙はKGBの前線として創設されたもので、偽著者による偽論文は40以上のソ連の新聞、雑誌、ラジオ、テレビで取り上げられ、さらに親ソ的な西側メディアにも流布されることで「作戦はめざましい成功を収めた」と言います(『「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア』小林由香利訳、NHK出版)。

    

アメリカの議員候補がプーチン支持加えて最も重要なことは、これらの荒唐無稽な物語が受け入れられやすくなっている心理的なニーズです。

    特にアメリカでは、宗教右派をはじめとするコミュニティーが自己正当化の材料にしている節が見いだされます。

    

宗教学者のアンシア・バトラーは、21世紀に入ってから宗教右派の人々がプーチンに好意を持ち始めた事情を明快に説明しています。

    

彼女は、保守政治行動会議(CPAC)で上院議員候補の女性が「ロシアはキリスト教の民族主義国家です。

    彼らは実際にロシア正教徒なのです……私はジョー・バイデンよりもプーチンのキリスト教的価値観に共感します」と話したことについて、「これは、現在の一部の共和党員やアメリカの白人福音主義者の間では珍しいスタンスではなく、以前は同性愛や権威主義、ドナルド・トランプ前大統領への忠誠心などについて、プーチンと信念が一致することから称賛の声が上がっていた」と指摘。

    「プーチンのナショナリズムは、彼らのキリスト教の信念と相まって、アメリカのあるべき姿だと考えている人が多い」との見方を示しました(Russia-Ukraine crisis complicates American white evangelicals' love for Putin/2022年3月2日/MSNBC)。

    

チェチェンで起きた「ゲイの粛清」2月26日からユーロスペースほかで劇場公開されているドキュメンタリー映画『チェチェンへようこそ―ゲイの粛清―』(監督:デイヴィッド・フランス/英米合作/2020年)は、チェチェンで起こっているゲイやトランスジェンダーに対する恐るべき人権侵害を暴いていますが、それらはロシア政府の容認に基づく憎悪犯罪であり、アメリカを含む世界中で吹き荒れる宗教右派の反動、専制主義への傾倒によってもたらさている悪夢の一端に過ぎません。

    

チェチェンに住むLGBTQの人々は暴行されたり、殺されたりしても、刑事事件として取り扱われることがありません。

    なぜなら警察が率先して彼らを拘束し、拷問し、「消す」からです。

    いかなる法的保護も受けられない事実上の生け贄(いけにえ)です。

    

映画は、国外脱出に手を貸すボランティアの人々と、命からがら彼らに助けを求めるLGBTQの人々を追いますが、面が割れると本人や関係者に累が及ぶため、「フェイスダブル」という特殊な画像処理技術を用いて、元の顔を別人のように加工して人物特定を困難にしています。

    デジタルエフェクト会社によって開発されたディープフェイクのような技術です。

    

ロシアでは、2013年に同性愛宣伝禁止法が成立して以降、LGBTQへの風当たりは強まるばかりで、チェチェンの惨状は完全にロシアと地続きの関係にあり、その中心には伝統的な家族観を重視するプーチン大統領がいます。

    

アメリカでも高まる反同性愛の動き前出のバトラーは、アメリカの福音主義者たちが「イスラム教徒に対する強硬姿勢や、何よりも反LGBTQを掲げているロシア大統領に長い間惹かれてきた」事実に触れ、「プーチンの国家、家族、教会(この例ではロシア正教会)についてのレトリックは多くの人を魅了し、ここアメリカでも同様の政治的行動をとるように駆り立てた」と述べます。

    

そして「テキサスやフロリダのような州では、反同性愛や反トランスジェンダーの法律が制定されつつある」と懸念しています。

    

つまり、アメリカにおいては宗教右派、福音派のような人々にとって、バイデン大統領率いるアメリカ政府とウクライナが悪巧みをしているという情報は、真偽に関わらず大変好都合なのです。

    

なぜなら、自分たちは「善」の側であり、「悪」は反キリスト的な振る舞いや、伝統的な家族観の破壊を推し進める側であることに疑問の余地はないからです。

    

金儲けと強欲がはびこっているように見える市場経済や、機能不全に陥っているように感じられる民主制が、自分たちの実存を脅かすものと捉える立場から見た場合、陰謀論は自分たちを納得させる認知的な整合を図るための格好の役割を果たします。

    

社会への不信からフェイクを求める政府に対する不信感が強く、現状に憤りや不満を抱えている人々も同様に動員される可能性が高まります。

    

現在の市場経済や民主制に上手く適合している富裕層やエリートなどといった階層への反発が蓄積しているほど、彼らがこぞって祭り上げる現実への拒絶が起きやすくなります。

    むしろそれらすべてを虚構の産物と嘲笑い、世界支配を目論む主犯が暴露され、懲罰される願望とも幻想ともつかない信念によって、自らの尊厳を手当てしようと企てずにはいられないからです。

    

先の映画が取り上げたような自分たちの生存を守るためにこそフェイクを切実に必要とする人々がいるとすれば、片や自分たちの実存問題を糊塗(こと)したいがためにフェイクを求めないではいられない人々がいるのです。

    

次第に足元がおぼつかなくなってゆくことが避けられないわたしたちの行く末を考えると、これらの象徴的な出来事はどこにでも訪れる暗黒の未来を示しているように思えなりません。

    

これは皮肉でも何でもなく、混じり気のないリアルなのです。

    

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