集中力が続かない人の6つのNGパターン「むやみやたらにカフェ勉」など集中力が続かない人ほど「やり方」に欠陥があります(写真: TY/PIXTA)仕事中や勉強中に「集中できない……」と頭を抱え、ついつい別のことを始めてしまって時間を無駄にした経験は、誰しも一度はあるのではないで
集中力が続かない人ほど「やり方」に欠陥があります(写真: TY/PIXTA)
仕事中や勉強中に「集中できない……」と頭を抱え、ついつい別のことを始めてしまって時間を無駄にした経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
特にここ2年ほどの間は新型コロナウイルス感染症拡大の影響でリモートワークやオンライン授業が急激に増えたこともあり、職場や学校以外の場所で集中し続けることの重要性が増しました。
自ら集中力をコントロールできるかどうかは、仕事のパフォーマンスや勉強の成果に直結する時代と言えるでしょう。
では、どうすれば集中力を維持できるのでしょうか。
集中力は環境の影響を受ける『勝手に集中力がつく1分ドリル』の著者、池田義博氏が集中力を維持するための行動を解説します。
NG1 むやみやたらにカフェ勉
NG2 自宅学習一辺倒
集中して作業するためにカフェに来てみたものの、別のことが気になってしょうがない。
少しだけ調べたら作業に戻るつもりだったのに、気づけばスマートフォンに夢中……なんてことはありませんか。
集中力は、当然ですが環境の影響も受けます。
しかも、やる気が出る場所には条件があるため「場所を変える」ことは非常に理にかなった行動です。
心理学には、モデルとなる他者の行動を観察することで、それを観察している本人も行動が促進されたり、新しい行動を学習したり、行動や習慣が修正されたりする「観察学習」というものがあります。
まわりの人が勉強していると「自分も勉強しなくては」という気持ちになるのは、この観察学習の心理によるものです。
ではなぜ、多くの人が読書や勉強に取り組むカフェでさえ、集中できないケースがあるのでしょうか。
それは、その場所と作業が合っていないからです。
じつはカフェは「覚える」インプット系の勉強・仕事には全く向きません。
カフェはBGMが流れていたり人の話し声が聞こえたりと、音のある空間です。
音は脳の働きに影響が大きいとされ、脳は本人の意識と無関係に音を聞き取ろうとします。
つまり脳のリソースを100%集中させるべきなのに、知らぬ間に脳の性能を落として作業しているわけです。
同じ理由で、何かを覚えるときに音楽やラジオを流すのも逆効果。
何かを覚えるなら無音がベストです。
反対に企画書を書いたり資料を作ったり問題集の問題を解いたりするアウトプット系の作業はどうでしょうか。
ある研究では、軽いざわめきがあるほうが適しているという結果が出ており、カフェの店内程度が最適なのだそうです。
まとめると、インプット系の作業をするときは図書館・ワーキングスペース・自習室といった、周囲が静かに仕事や勉強、読書に取り組む環境が最適。
アウトプット系の作業には、カフェのような空間がおすすめです。
集中力の持続には限界がある
NG3 休憩時間にダラダラSNS徘徊
NG4 休憩なしで一心不乱に勉強・仕事
集中力の持続には限界があるので、高いパフォーマンスを維持するには休憩も欠かせません。
しかし上手に休憩を取れないと「休憩したらかえって集中が切れてしまった」「休憩を挟んだままついダラダラしてしまった」なんてことになりかねません。
私が最もおすすめしたいのは、動物の画像や動画を眺めることです。
以前から動物を扱ったテレビ番組は人気があり、近年はネット上にも動物の画像や動画がよくアップされているように感じます。
ストレスフルな社会環境が、無意識に動物に癒しを求める人を増やしたのかもしれません。
かわいい動物を眺めると本能的に心が癒されるのは理解できますが、じつは集中力も高まることが、大阪大学の入戸野宏教授の研究により判明しました。
かわいいものを見ると脳内に「もっと見たい」「ずっと見ていたい」という欲求が生まれ「より細部までくまなく観察したい」という心理が生まれるそうです。
つまり「かわいい」と感じることが、集中力を高める要因の一つになっているわけです。
さらに驚くことに、その状態はしばらく続くため、その後に仕事や勉強など別のことを始めても集中力が上がった状態を持ち越せるのだとか。
別の海外の研究でも、かわいいと思うものの写真を見ると、脳内で「報酬系」と呼ばれる神経回路を構成する「側坐核」の活動が高まることがわかっています。
側坐核は「やる気」「意欲」に関わる部位で、さまざまな快感情に影響を与えます。
では、かわいいものをずっと見続けるほど効果が高まるのかというと、そんなことはありません。
あまり長いと逆効果になるそうなので、注意が必要です。
集中したいときには、目に入る場所に飾らないほうがいいでしょう。
ハマりすぎるとタスクをこなすモードに気分が戻れなくなることもあるそうなので、休憩中に短時間だけ写真や動画を見るのが最も効果的です。
入戸野教授の研究では、見る時間は1分~1分半が適しているとのこと。
意外と短い時間で集中力を得られますので、ぜひお試しください。
NG5 目についた課題から作業開始
NG6 綿密な計画を立ててからスタート
集中するためには「やる気が出なくてもとにかく始めてみるといい」とよく言われます。
これにはきちんとした理由があり、脳の「側坐核」のはたらきが関係しています。
脳内にある「側坐核」は集中力を勝手に高めてくれるエンジンの1つで、とても強力なパワーの持ち主です。
しかし残念ながら反応が鈍い部位でもあるので、目覚めるまで、とにかく行動するしかありません。
やりたくないことも始めてみたらできた、というのは「側坐核」が助けてくれたことが考えられます。
つねに優先順位が存在する
では適当に順番を決めて、とにかく始めればいいかというと、それも疑問です。
課題にはそれぞれ特徴があるため、進め方を誤ると質の低いパフォーマンスしか出せません。
片づけのときに、こまかいものの整理から始めるといつまでも片づかないように、日常生活でもつねに優先順位が存在します。
それを見極めて取り組むだけで効率も成果も上がるのと同じです。
複数の情報から重要なものを選びフォーカスする力は「集中力」を構成する重要なファクターです。
間違いなく言えるのは「この仕事も終わらせないといけないし、あの仕事も進めないといけない」「どの仕事から始めればいいかな……」などと目移りしているうちは集中できないということ。
「集中している」というのは1つのものごとに目や意識がしっかり集まっている状態です。
目移りを防ぐには、瞬時に全体像を掴み、そのパターンや関係性、重要性を把握し、最優先項目をピックアップする能力が不可欠です。
この能力で課題を絞り込めてはじめて、深い集中への入り口に立つことができます。
集中力を発揮するための下ごしらえとも言うべきこの能力を、私は「イメージ識別スキル」と呼んでいます。
むやみやたらに作業を始めて得られた集中と、イメージ識別スキルを駆使して得られた集中には天と地ほどの差があります。
究極の集中力を発揮するなら、やるべき仕事・勉強、緊急度合いや重要性、自分の実力、取り組み方などを総合的に見極め、最優先事項を選び出すのが望ましいでしょう。
(池田 義博 : 記憶力日本選手権大会最多優勝者、世界記憶力グランドマスター)
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